AMDの最新HEDTプロセッサ、Threadripper 9000シリーズがリーク情報により再び注目を集めている。最大96コアを搭載し、350WのTDPを維持するフラッグシップモデル「9980X」は、性能重視の設計を強調。最小構成の16コアモデルも同様のTDPを採用し、従来の高効率志向とは一線を画す戦略がうかがえる。
「Shimada Peak」のコードネームで知られる本シリーズは、Zen 5アーキテクチャを基盤とし、現行の7000シリーズを超えるクロックスピードと性能を実現すると予測される。HEDT市場におけるAMDの狙いは、効率性よりも性能を追求し、業務用の需要に応える点にあると見られる。特に16コアモデルはPROバージョンへの展開が有力視され、シリーズ全体で多様な用途に対応可能な設計が期待されている。
最大96コアを誇る「9980X」の性能とその意義
Threadripper 9000シリーズのフラッグシップモデルである「9980X」は、96コアという圧倒的なコア数を搭載しながらも、TDPは350Wに抑えられている。この設計は、前世代の7980Xを踏襲しており、最大限の性能を確保しつつ発熱を制御するAMDの技術力の高さを示している。また、Zen 5アーキテクチャの採用により、クロック性能や電力効率の向上が期待される。
しかし、96コアという仕様が一般ユーザーにとって実用的かどうかは議論の余地がある。HEDT市場においては、クリエイターやエンジニア向けの用途が主軸であり、多数のコア数が求められる一方で、消費電力の高さが一般家庭の使用を難しくする可能性もある。
Tom’s Hardwareの分析によれば、この製品は特に業務用ソリューションとして設計されている可能性が高い。AMDは、性能重視の設計によってHEDT市場での優位性をさらに強化しようとしていると考えられる。
最小16コアモデルの位置づけとPROシリーズへの影響
今回のリークで注目を集めた16コアモデルは、過去のThreadripperシリーズの中では異例であり、7000シリーズ以降では存在しなかった。このモデルが通常の9000シリーズに含まれる可能性は低く、むしろPROシリーズとしての位置づけが有力視される。
これまでの5000シリーズや3000シリーズのPROバージョンにも16コアモデルが含まれており、業務用の高性能ワークステーションに適した設計となっている点が共通している。
この動きは、AMDがPROシリーズを通じて特定の専門分野に特化した製品展開を強化していることを示している。例えば、CADや3Dレンダリングなどの分野では、膨大な並列処理能力よりも効率的なタスク処理が求められるため、16コアモデルのようなバランスの取れた選択肢が需要に応える可能性が高い。
一方で、TDPが350Wという仕様は一般的な16コアCPUと比較すると異例であり、効率性よりも性能を重視したアプローチが目立つ。
Zen 5アーキテクチャの進化が示すAMDの戦略
Threadripper 9000シリーズに採用されているZen 5アーキテクチャは、EPYCシリーズの第5世代CPUにも導入されており、全体的な性能向上が確認されている。特にクロックスピードでは前世代よりも高い数値が実現されており、Ryzen 9 9950Xでは最大5.7 GHzを記録している。この進化により、HEDT市場だけでなく、他のセグメントにも影響を与える可能性がある。
AMDのこの戦略は、単なるプロセッサ市場での競争ではなく、クラウドサーバーや業務用分野といった幅広い市場におけるシェア拡大を意識したものだと言える。
特に、クラウド向けに設計されたZen 5cバリアントがThreadripper 9000シリーズには導入されていない点は、HEDT市場とサーバー市場を明確に区別するAMDの戦略が垣間見える部分である。このアプローチは、HEDT市場の特性に最適化された製品開発を示すものであり、AMDの市場理解の深さを裏付けている。