AMDが発表したRyzen AI MAX 300シリーズ「Strix Halo」は、最新のZen 5 CPUコアとRDNA 3.5アーキテクチャの統合GPUを組み合わせ、AppleのM3 ProやM3 Maxに対抗する高性能モバイルプロセッサである。
1年以上にわたる開発期間を経て、最大16コアのCPU、256ビット幅のLPDDR5Xメモリ対応など、競争力を強化した仕様が特徴だ。最上位モデルのRyzen AI MAX+ 395には、Radeon 8060S iGPUが搭載され、2048ストリームプロセッサを含む40コンピュートユニットがフル稼働する。
AMDが目指す新たなモバイルプロセッサの境地
AMDが発表したRyzen AI MAX 300シリーズ「Strix Halo」は、モバイルプロセッサの性能を次の段階へと押し上げる製品である。これまでのRyzenシリーズがデスクトップやゲーミングノートで支持を集めた背景に、AMDはZen 5アーキテクチャとRDNA 3.5ベースのiGPUを搭載し、さらに洗練された性能と効率を備えたプロセッサを目指している。
Strix Haloの最大の特徴は、AppleのM3 ProやM3 Maxに匹敵するAI機能を持ちながらも、マルチチップモジュール(MCM)設計を採用し、複数のZen 5 CCDと大規模なSoCダイで高い処理能力と多用途性を確保した点にある。特に、TSMCの先端5nmまたは4nmプロセス技術により、高密度化と省エネ性能の両立を実現した。
AMDはこのプロセッサでモバイル市場におけるリーダーシップの強化を狙っており、これまで同社が培ってきたAI処理能力やグラフィック性能の技術基盤を活かし、将来的な製品ラインの拡充も視野に入れている。Guru3Dをはじめとする複数のメディアは、このプロセッサが市場に与える影響に注目しているが、AMDの意図と将来の製品展開を見据えた取り組みには、業界関係者も期待を寄せている。
Strix HaloのAI機能とGPU性能の詳細
Ryzen AI MAX 300シリーズに搭載された統合GPU(iGPU)には、Radeon 8050Sや8060Sが採用されており、従来の統合GPUを超える性能を発揮することが示唆されている。
具体的には、最高モデルのRyzen AI MAX+ 395のiGPUは、40コンピュートユニット(CU)と2560ストリームプロセッサを備え、AI処理やグラフィックの描画性能で単体GPUに匹敵する能力を持つ。この性能は、AppleのMシリーズや他のモバイル用ハイエンドプロセッサとの競争において大きなアドバンテージとなるだろう。
また、XDNA 2 NPUの採用により、50 TOPSのAI推論処理能力を備え、リアルタイムのAIアプリケーションやエッジコンピューティング用途に適している点も重要である。AI処理の分野では、AMDがエンタープライズからエッジ、モバイルに至るまでの統合的なアプローチを進めていると考えられ、これによりAI対応製品の拡大が期待される。Golden Pig Upgradeのリーク情報を踏まえると、今後、さらなるカスタマイズ可能なSKUが発表される可能性がある。
独自解説:メモリインターフェースとMCM設計の持つ意義
Strix Haloシリーズは256ビット幅のLPDDR5X-8000メモリインターフェースを採用しており、この点が大容量データ処理や高速メモリバンド幅を必要とする処理において優位性を持つ要因となる。特に、AI処理や高解像度グラフィックの処理において、AMDがこのメモリ幅にこだわった背景には、消費電力と効率のバランスを最適化する狙いがあると考えられる。
さらに、Ryzen AI MAX 300シリーズに見られるMCM設計の意義は、複数のCCDやSoCダイを一体化することで高性能かつ省スペース化を実現し、熱効率も向上させるという点にある。
この設計はサーバー向けの「Turin」やデスクトップ向け「Granite Ridge」との連携にも対応可能であり、製品の汎用性を大きく高めることができる。AMDはこの設計の応用範囲を広げ、次世代のデバイスやアプリケーションに最適なプラットフォームを提供していく姿勢を見せている。