Googleの次期SoC「Tensor G5」は、QualcommやAppleが採用しているカスタムCPUコアを搭載しないことが明らかになった。しかし、GPUにはレイトレーシングや仮想化サポートが追加され、競合に対抗する姿勢を見せている。新型CPUはCortex-X4とCortex-A725を採用し、製造プロセスの向上でマルチコア性能の向上が期待されている。

GoogleのTensor G5、カスタムCPUの採用を見送り

Googleの次世代SoC「Tensor G5」は、AppleやQualcommが自社製品に採用しているカスタムCPUコアを採用しない決定が下された。これにより、競合他社に対するパフォーマンスでの優位性を持たない可能性が高まっている。特にQualcommの最新チップである「Snapdragon 8 Elite」や、Appleの「A18 Pro」と比較して、カスタム設計の利点を享受できない点が失望されている。

Tensor G5は、最新のCortex-X925ではなく、1つのCortex-X4を主力として採用する構成となっている。Cortex-X925は、ARMの最新技術を反映した高性能コアで、これを採用しなかったことは、特に性能重視のユーザーにとって大きな懸念材料である。Googleは、カスタムコアではなく、既存のARM設計を利用することでコストや開発期間の削減を狙っているとも推測されるが、これによりパフォーマンスで後れを取るリスクが伴う。

この決定は、特にプロセッサの競争が激化する中で注目されている。カスタムコアの採用を見送ったTensor G5は、Googleの他の技術革新でその遅れを補う必要があるだろう。

新型GPUがレイトレーシングと仮想化機能を搭載

Tensor G5のGPUには、これまでのGoogle製チップには搭載されていなかったレイトレーシング機能が加わることが明らかになった。レイトレーシングは、光の反射や屈折をリアルタイムにシミュレーションする技術で、特にゲームやグラフィック重視のアプリケーションにおいて重要な機能である。この技術の搭載により、Pixelシリーズのスマートフォンでもよりリアルなグラフィック表現が可能になる。

さらに、GPUは仮想化サポートも提供する予定で、これにより複数の仮想マシンが1つのGPUを共有し、リソースの効率的な利用が可能となる。この技術は主にサーバーやデータセンター向けだが、モバイルデバイスでも仮想化の恩恵を受ける可能性がある。これにより、Tensor G5搭載のスマートフォンは、より複雑な計算や高度なグラフィックス処理が可能となる。

Googleがこれらの新機能を採用した背景には、競合製品に追随し、技術的な遅れを取り戻す意図があると考えられる。

CPU性能は競合に劣るがマルチコア向上の可能性

Tensor G5は、最新の製造プロセスである3nm技術を採用し、これにより複数のコアを効率的に配置することが可能となった。特に、Cortex-A725コアが5つ採用されており、前世代のTensor G4よりも多くの高性能コアを搭載していることが注目される。この改良により、Tensor G5はマルチコア性能での大幅な向上が期待されている。

ただし、単一の高性能コアであるCortex-X4のみに依存しているため、シングルスレッド性能では競合他社に劣る可能性が高い。特に、QualcommやAppleが独自のカスタムコア設計によりシングルスレッドの強力な性能を誇るのに対し、Googleはその部分での遅れを技術的に補完する必要がある。

とはいえ、マルチタスク処理や複数のアプリケーションを同時に実行するシーンでは、Cortex-A725コアの増加が大きな利点となる可能性がある。これにより、全体的なパフォーマンスのバランスを保ちながら、Googleが求めるユーザー体験の向上が図られると考えられる。

次世代Tensor G6への期待が高まる

今回のTensor G5の発表により、既に次世代のTensor G6への期待が高まっている。Tensor G5は、いくつかの重要な進化を遂げたが、依然としてカスタムCPUコアの非搭載や、シングルスレッド性能での劣位が指摘されている。こうした課題は、Tensor G6での解決が期待されている。

特に、Googleが次世代のチップ設計において、カスタムCPUコアを導入するかどうかが大きな焦点となるだろう。また、GPUのさらなる強化やTPUの性能向上も期待される。Tensor G5ではTPUの性能が14%向上するとされているが、これだけでは競合に追いつけない可能性があるため、Tensor G6ではさらなる飛躍が求められる。

次世代Tensor G6がどのような形で市場に登場するか、引き続き注目が集まる。