AMDの4コアプロセッサEPYC 4124Pが、X670マザーボードで無改造で動作することが確認された。さらに、オーバークロックも可能であり、消費者向けマザーボードでの動作において意外な性能を発揮している。一方で、ゲーミング性能においてはRyzenシリーズに劣る結果となっており、今後の価格次第では利用価値が見直される可能性もある。

EPYC 4124Pの特異性と消費者向けマザーボードでの動作

AMDのEPYC 4124Pは、企業向けに設計されたプロセッサでありながら、一般消費者向けのマザーボードであるX670で問題なく動作することが確認された。通常、このような企業向けCPUは、特定のサーバーやワークステーション向けのマザーボードでしか使用できないため、EPYC 4124Pの柔軟性は驚きである。特に、X670EのASUS ROG Crosshair Heroマザーボードでは、カスタムBIOSや特殊な改造なしで動作し、消費者向けハードウェアと互換性があることが示された。

EPYC 4124Pは4コアの構成で、AMDの消費者向けAM5シリーズにはないユニークな選択肢となっている。このCPUが注目された理由の一つは、価格が手ごろで、消費者向けマザーボード上でのオーバークロックが可能な点である。さらに、AMD EXPO(オーバークロック用プロファイル)にも対応しており、6000 MT/sのクロック速度で動作させることができる。こうした特性から、EPYC 4124Pは消費者にとって新たな可能性を示している。

特にゲーミング向けには設計されていないが、その多用途性と消費者向けプラットフォームでの利用可能性は、特にハードウェア愛好家にとって興味深い選択肢である。価格と性能のバランスを考慮すれば、今後の需要に応じてさらなる注目を集める可能性がある。

オーバークロック性能の意外なポテンシャル

EPYC 4124Pの最大の驚きは、そのオーバークロック性能である。通常、企業向けに設計されたEPYCシリーズは、オーバークロックが考慮されていないが、X670Eマザーボード上では、オーバークロックが可能であることが確認された。テストを行った技術者によると、標準状態でのクロック速度は5145 MHzに達し、パッケージ全体の消費電力は88Wに留まった。

さらに、プロセッサをデリッドし、液体金属を用いた水冷システムを搭載した結果、負荷時の温度が20度も低下し、消費電力も6W削減された。こうした改善により、オーバークロックの余地がさらに広がり、500 MHzのクロック速度向上が達成された。この結果、ゲーミング性能が10%改善されたが、それでも最新のRyzen 7600Xには及ばなかった。

このテスト結果は、EPYC 4124Pが驚くべきオーバークロックポテンシャルを持っていることを示している。企業向けプロセッサでありながら、消費者向けマザーボードでのパフォーマンス向上が可能であることは、技術愛好家にとって興味深い発見である。特に、自作PCの世界では、こうした意外な組み合わせが新たなトレンドを生み出す可能性がある。

Ryzenシリーズとの比較、ゲーミング性能の限界

EPYC 4124Pのゲーミング性能は、期待以上のポテンシャルを示したものの、Ryzen 7600Xにはまだ及ばない結果となった。テストによれば、EPYC 4124Pは、オーバークロック状態でも30〜50%の性能差があり、ゲーミングにおいては現行のRyzen 5 7600Xには到底敵わない。これは、主にコア数の差に起因している。

EPYC 4124Pは4コアに限定されているが、現行のRyzenシリーズでは6コアや8コアのモデルが主流となっており、ゲーミングやマルチタスクにおいてその差が顕著に表れる。特に、最新のゲームタイトルでは、CPUのコア数が重要な要素となっており、4コアでは負荷が高くなる場面が多い。したがって、ゲーマーにとっては、EPYC 4124PよりもRyzenシリーズの方が適していることは明白である。

しかしながら、EPYC 4124Pは価格と性能のバランスを考えると、特定の用途では魅力的な選択肢となる可能性がある。例えば、価格が下がれば、ゲーミング以外の用途、例えば軽いワークステーション用途やサーバー向けの利用が考えられる。今後の市場動向次第で、再評価される可能性も残されている。

価格と将来の可能性

EPYC 4124Pの現時点での価格は約160ユーロと、Ryzen 5 7500Fと比べても割高である。しかし、この価格帯において、企業向けのプロセッサが消費者向けプラットフォームで動作し、さらにオーバークロックまで可能という点を考慮すると、その価値は一考に値する。特に、価格が下がる可能性があることを考えると、将来的には新たな市場での需要が見込まれる。

一方、現行のRyzen 5 7500Fや8000Gシリーズは、同じ価格帯でより多くのコアと優れたゲーミング性能を提供しているため、EPYC 4124Pはゲーミング用途には適していない。ただし、今後の価格調整や市場の変化によっては、EPYC 4124Pがコストパフォーマンスの高い選択肢となる可能性もある。特に、軽いサーバー用途や、低消費電力のワークステーション向けには、有力な候補となるかもしれない。

EPYC 4124Pは、価格と性能の折り合いをつけた製品であり、今後の動向次第では、消費者向けプロセッサとしての地位を確立する可能性がある。技術の進化や市場の需要に応じて、再評価される余地が十分に残されている。