2025年にはAMDやIntelから、144コアや288コアといった超多コアCPUが市場に登場する。これにより、サーバーの統合やスペース削減が期待されているが、その一方でリスクの集中が懸念されている。

特に、サーバーの故障が多くの業務に影響を与える点や、膨大なメモリのコストが増大する点などは大きな課題だ。

これらの超多コアCPUは、一部の大規模クラウド事業者にとっては有効だが、すべての企業がその恩恵を享受できるわけではない。

超多コアCPUの台頭とその利点

2025年には、AMDやIntelから超多コアCPUが登場する。これにより、データセンターの運用に革新がもたらされることが期待されている。例えば、AMDの「Turin Epyc」プロセッサは192コア、Intelの「Granite Rapids Xeon」プロセッサは128コアを搭載し、これまで以上に多くのワークロードを処理する能力を持つ。これにより、従来必要だった複数のサーバーを1台に統合することが可能となり、サーバーラックのスペース削減や電力コストの大幅な削減が見込まれている。

また、これらの超多コアCPUは、クラウド事業者やハイパースケールデータセンターにおいて、効率的なリソース配分を可能にする。これにより、特に大規模なワークロードや仮想化環境での運用が容易になり、運用効率が向上する。さらに、統合による管理コストの削減やメンテナンスの簡素化が進むとされている。だが、その利点ばかりに注目していては、見落とされがちなリスクが存在する。単なる技術革新としてではなく、その潜在的な危険性を含めて検討することが求められる。

データセンターにおけるリスクと集中化

超多コアCPUの導入には、大きなリスクが伴う。それは、リソースの集中による「リスクの集中化」である。多くのワークロードを1台のサーバーで処理できる一方、そのサーバーがダウンした場合の影響は甚大である。従来のサーバー構成では、複数のマシンに分散していた処理が1台に集約されることで、1つの故障がシステム全体に影響を与える可能性が高まる。

確かに、フェイルオーバー技術やデータバックアップ技術は進化しており、障害発生時の対策も整いつつある。しかし、超多コアCPUにより一度に処理されるデータ量が増加すると、これらの対策が現行のシステムでは対応しきれないケースも出てくるだろう。さらに、データ復旧や障害対応にかかる時間が増加すれば、ビジネスに与える損害も甚大である。新技術を導入する際には、そのリスクを正しく評価し、慎重な判断が求められる。

メモリコストと失敗時の影響

超多コアCPUを活用するには、膨大なメモリが必要である。1台のサーバーに数百コアものCPUを搭載し、複数のワークロードを同時に処理するためには、それに見合った大容量のメモリが不可欠である。しかし、メモリの価格は依然として高止まりしており、そのコストは無視できない。実際、メモリの導入コストがサーバー自体の価格を上回るケースも多い。

さらに問題となるのは、メモリに依存する処理能力の低下である。メモリ不足が発生した場合、処理が滞ることでサーバー全体のパフォーマンスが低下し、場合によってはシステムダウンにつながるリスクも存在する。また、災害復旧(DR)時にこれらの高性能なサーバーをサポートするためには、同様の大容量メモリを持つバックアップシステムが必要となり、コストはさらに増大する。多コアCPU導入の際には、メモリとその管理コストを十分に考慮する必要がある。

ハイパースケーラーへの依存が進む未来

超多コアCPUの恩恵を最大限に引き出せるのは、ハイパースケールと呼ばれる巨大なクラウド事業者である。AWSやGoogle、Microsoftなどは、大規模なサーバーファームを持ち、数千台規模のサーバーを同時に運用している。彼らは高性能なハードウェアの導入と同時に、障害時のリスク分散や復旧体制をしっかりと整備しているため、超多コアCPUの導入によるメリットをフルに活用できる。

一方で、中小規模のデータセンターや企業が同じ技術を採用する場合、そのコストとリスクの管理は困難となる。結果として、これらの企業がクラウド事業者に依存する傾向が強まる可能性が高い。クラウドへの依存度が高まれば、企業はコストの不透明さやベンダーロックインのリスクにさらされることになる。したがって、技術革新によってハイパースケール事業者が一層優位に立つ未来が予測されるが、そのリスクも慎重に見極める必要がある。