富士通とSupermicroは、次世代のArmベース高性能プロセッサ「MONAKA」を共同で開発している。
このプロセッサは、AIやデータ解析、HPC(高性能計算)などの高度な処理に対応することを目指している。さらに、両社は液冷システムの導入を推進しており、急増するデータセンターの消費電力問題に対応する構えである。

ArmベースCPU「MONAKA」とは

富士通が開発中の「MONAKA」は、Armアーキテクチャを採用した次世代の高性能プロセッサである。Armチップは、これまで消費電力が少なく、発熱が抑えられる点が特徴とされてきたが、「MONAKA」はそれをさらに進化させ、エネルギー効率の向上を目指している。このプロセッサは、従来の高性能計算(HPC)だけでなく、AIやデータ解析といった多様なワークロードにも対応できる汎用性を持つことが期待されている。

また、富士通はこの「MONAKA」を2027年までに市場投入する予定であり、その時点で主力製品となる見通しである。同社はすでに2022年にメインフレームの製造を2030年までに終了することを発表しており、Unixサーバーも2029年までに廃止する計画を立てている。これにより、「MONAKA」は富士通にとって次世代のデータセンターチップとしての位置付けが明確であり、企業のデジタルインフラを支える重要な役割を果たすことになる。

「MONAKA」は、消費電力が抑えられ、発熱量も少ないため、環境負荷の低減を目指した持続可能な技術としても注目されている。これは、特にAI技術が急速に進化する中で、その処理負荷を効率的に処理するプロセッサとしての役割が期待されているためである。

Supermicroの「Building Block」アプローチとその利点

Supermicroは「Building Block」アプローチという独自の設計手法を採用している。これは、顧客のニーズに合わせてシステム構成を自由にカスタマイズできるモジュール型のアプローチである。この設計方法により、ユーザーはシステムの拡張性を確保しつつ、コスト効率の良いソリューションを実現できる。

「Building Block」アプローチの利点として、システム構成を自由に選択できる点が挙げられる。たとえば、熱管理の方法として、空調システム、フリーエア冷却、液冷システムなどから選択できる。これにより、特定のワークロードやアプリケーションに最適な熱管理が可能となり、運用コストの削減にも貢献する。

また、Supermicroはこのアプローチを通じて、スケーラブルで柔軟なソリューションを提供し、顧客が将来の技術革新にも対応できるようサポートしている。この設計は特に、企業がデータセンターの拡張や更新を行う際に、無駄なリソースを抑えつつ効率的にシステムを運用するための強力な武器となっている。

液冷技術の導入とデータセンターへの影響

富士通とSupermicroの提携における重要な要素のひとつが液冷技術である。液冷システムは、従来の空冷システムに比べ、はるかに効率的な熱管理を実現することが可能であり、特に高負荷の計算処理を行うデータセンターにおいてその効果が顕著である。

この液冷技術は、特にAIや高性能計算(HPC)の分野でその重要性を増している。これらのワークロードは従来以上に高い電力消費を伴うため、より効率的な冷却システムが不可欠となっている。富士通は、同社の「MONAKA」プロセッサを活用した液冷システムを通じて、これらの技術的な課題に対応する考えである。

また、液冷システムは、電力コストの削減にも寄与するとされている。データセンターの電力消費は急激に増加しており、特にAI技術の進展により、さらなる電力需要が見込まれている。この問題に対処するため、富士通とSupermicroは液冷技術の開発を進め、将来的なデータセンターの省エネルギー化を目指している。

高性能計算(HPC)とAIの未来を見据えた戦略

富士通とSupermicroは、次世代の高性能計算(HPC)とAIワークロードに対する市場の需要を見据え、共同で新しいプラットフォームの開発を進めている。このプラットフォームは、特にAIや機械学習の分野において、急速に増加するデータ処理のニーズに対応するために設計されている。

「MONAKA」プロセッサは、この戦略の中核を担う存在である。このプロセッサは、エネルギー効率に優れた設計を採用しており、AIやデータ解析などの高負荷な処理を効率的にこなすことができる。また、富士通はSupermicroと連携し、液冷技術を導入することで、これらの処理に伴う電力消費や熱問題を解決する考えである。

さらに、富士通の関連企業であるFsas Technologiesは、SupermicroのGPUサーバー製品を基盤としたAIプラットフォームを提供し、企業向けに高度なAIソリューションを展開する計画である。これにより、企業がAI技術を活用して業務を最適化し、新たなビジネスチャンスを生み出すことが可能となるだろう。