AMDは、最新のRyzen 9000シリーズ向けに105WのTDPモードを正式にサポートし、オーバークロックを最大8,000MHzのDDR5メモリにも対応させるアップデートを発表した。この変更により、マルチスレッドワークロードでの性能向上が期待されており、特にCPU負荷の高いゲームにおいてフレームレートの安定性が向上する。さらに、新しいBIOSではコア間レイテンシも改善され、より滑らかなパフォーマンスが実現される。

105W TDPモードでパフォーマンスアップ

AMDは、Ryzen 9000シリーズにおいて、これまで非公式だった105WのTDPモードを正式にサポートすることを発表した。この新モードにより、CPUのパフォーマンスが大幅に向上し、特にマルチスレッドワークロードでの効率が劇的に改善される。従来の65Wから105WへとTDPが引き上げられたことで、従来の使用法では得られなかった速度と安定性が実現する。

このモードは、Ryzen 5 9600XやRyzen 7 9700Xなどの最新のAMD CPUに適用され、メーカー保証が失われるリスクなく、高性能なオーバークロックが可能となる。ただし、この新しいTDPモードを利用する場合、適切な冷却システムの導入が推奨されており、熱管理が不可欠である。AMDのデータによれば、105Wモードでの性能向上は、マルチコア性能で最大13%にも達するとされている。

一方、シングルコアでの性能向上は控えめであり、ゲームにおいては大幅なパフォーマンスの向上が見込めるわけではないが、マルチスレッド対応のゲームではフレームレートの安定性が向上する可能性が高い。これにより、Cities Skylines 2のようなCPU負荷の高いゲームにおいては、よりスムーズなプレイが期待される。

DDR5-8000MHzメモリのオーバークロック対応

AMDは、新たに導入するBIOSアップデートを通じて、DDR5-8000MHzメモリのオーバークロックをサポートする機能を提供する。この変更は、AMD EXPO(Extended Profiles for Overclocking)により、ユーザーが簡単にメモリをオーバークロックし、最大のパフォーマンスを引き出すことができるようにする。

従来、AMD EXPOは6,000MHzまでのメモリにしか対応していなかったが、今回のアップデートで8,000MHzまでサポートが拡大された。これにより、ゲームやグラフィック処理などの負荷が高い作業において、より高いメモリ帯域幅が得られ、処理速度が向上する。また、AMDは6,000MHzが依然として「スイートスポット」であるとしているが、エンスージアスト層にとっては、さらなるパフォーマンス向上を求めて8,000MHzメモリを活用することができる。

このEXPOサポートの強化は、特にX870やX870Eなどの最新のマザーボードと組み合わせることで、その真価を発揮する。AMD EXPOによるワンクリックでのオーバークロック設定により、複雑な設定を行わずに、最大限のパフォーマンスを簡単に引き出すことが可能である。

マルチスレッド性能の向上でゲーム体験を改善

AMDのRyzen 9000シリーズは、今回のアップデートにより、特にマルチスレッド性能が大幅に向上することが期待されている。新しい105W TDPモードは、マルチスレッド処理においてCPUの動作クロックとパワーリミットを高め、より高い処理能力を発揮する。この変更により、ゲームや動画編集など、マルチコアに依存するタスクでのパフォーマンスが強化される。

例えば、Cities Skylines 2のようなマルチスレッド対応のゲームでは、従来よりもフレームレートの安定性が向上し、よりスムーズなゲームプレイが可能になる。AMDによると、このアップデートは特にマルチコアに依存する処理で恩恵が大きく、全体的なパフォーマンスが約10%から13%向上するとされている。

しかし、シングルスレッド処理にはあまり大きな影響がないため、マルチスレッドを活用しないタスクでは、性能向上の恩恵を受けにくい。とはいえ、最新のRyzen 9000シリーズは、このアップデートによって競争力を取り戻し、特にハイエンドのゲームPCにおいてその存在感を高めることとなる。

コア間レイテンシの改善が新BIOSで実現

AMDは、最新のAGESA PI 1.2.0.2 BIOSアップデートにおいて、コア間レイテンシの改善を行った。これにより、CPU内部のコア間でのデータ転送速度が向上し、特にマルチスレッド処理でのパフォーマンスが強化される。この問題は、Ryzen 7000シリーズと比較した際に発見されていたものであり、今回のアップデートでようやく解決されることとなる。

コア間レイテンシとは、CPUの各コアがデータを互いにやり取りする際にかかる時間を指し、この時間が短縮されることで、処理の効率が向上する。特に、複数のコアを同時に使用するワークロードやゲームにおいて、データのやり取りがスムーズになるため、全体的なパフォーマンスが向上する。

このアップデートは、マザーボードメーカーを通じて順次リリースされており、ユーザーはBIOSのフラッシュを行うことで、これらの改善を適用することができる。コア間レイテンシの改善は、特にプロフェッショナルな用途や重負荷のゲームプレイにおいて、その効果を大いに発揮するだろう。