Microsoftは、最新のWindows 11 24H2アップデートにより、Windows Mixed Reality(MR)ヘッドセットのサポートを完全に終了した。

これにより、Acer、Asus、HP、Lenovoなどの企業が製造していたMRヘッドセットは、Windows 11上で使用できなくなり、SteamVRでの利用も不可能となった。

この決定は、Windows MRが市場での成功を収められなかったことに加え、MicrosoftがMetaとのパートナーシップにシフトしていることを反映している。

Windows 11 24H2アップデートがもたらした影響

Windows 11の最新アップデートである24H2は、Windows Mixed Reality(MR)ヘッドセットのサポートを完全に終了させた。この変更により、Acer、Asus、HP、Lenovo、Samsungなどの主要なメーカーが製造していたWindows MRヘッドセットは、Windows 11上で一切の機能を失うことになった。特に、SteamVR上での利用が不可能になったことで、ユーザーはVR体験の選択肢を大幅に狭められている。

このアップデートにより、Windows MRのユーザーは、今後ヘッドセットを使い続けるためにはバージョン23H2でアップデートを停止するしかないという事態に直面している。23H2は2026年11月までSteamVRのサポートを継続する予定だが、それ以降のサポートは保証されていない。多くのユーザーにとって、このアップデートは既存デバイスを「文鎮化」させるものとなり、MRヘッドセットが事実上の終焉を迎えたと言える。

この背景には、Windows MRの市場でのシェアが低迷していたことがある。SteamVRのユーザーデータによれば、MRヘッドセットの利用率はピーク時の2019年には10%を超えていたが、2023年にはわずか3.5%にまで減少している。

Windows MRヘッドセットの終焉とその背景

Windows MRは、2017年に最初のヘッドセットが登場してから、期待されたほどの市場拡大を果たすことができなかった。Oculus RiftやHTC Viveなどと競争するために登場したこれらのヘッドセットは、当時としては先進的な技術である「内向き外向きのポジショントラッキング」を備えていたが、いくつかの致命的な欠点が普及を妨げた。

最も大きな問題は、トラッキング性能の不十分さである。他のVRヘッドセットが複数のカメラを用いて広い範囲の動きを検知できるのに対し、Windows MRヘッドセットは前面に2つのカメラしか搭載しておらず、手の動きの範囲が限定されていた。また、コントローラーの使い勝手も悪く、安価に設計されたことが手に取る感覚に大きく影響していた。

さらに、これらの欠点が解消される前に、Meta(旧Facebook)のOculus Questシリーズが市場を席巻し、特にスタンドアロン型VRヘッドセットとしての利便性と低価格がユーザーに支持された。結果として、Windows MRは徐々に市場シェアを失い、アップデート終了のタイミングで終焉を迎えることとなった。

今後のVR・MR市場におけるMicrosoftの戦略

Windows MRのサポート終了を受け、Microsoftは今後のXR(拡張現実)市場における戦略を大きく変化させている。その一環として、Metaとの長期的なソフトウェアパートナーシップにシフトしており、VRおよびMRハードウェアの開発からは一旦手を引く方針を示している。このパートナーシップは、Oculus Questシリーズに対するソフトウェア提供を中心に展開され、Windowsアプリケーションの新しいAPIである「Windows Volumetric Apps」の導入がその一例である。

Microsoftは、このAPIを通じて、Questヘッドセット上でPCアプリケーションの3D要素を拡張できるようにする計画を発表している。また、Questヘッドセットを利用して、Windows 11のラップトップを視線操作で拡張する機能の提供も予定している。このように、Microsoftは今後、VRおよびMRハードウェアの開発よりも、ソフトウェアの分野での優位性を強化し、Metaとの協力によって新たな価値を提供することを目指している。

しかし、この戦略転換は、Windows MRに期待していたユーザーにとっては大きな失望をもたらすものでもある。

Metaとのパートナーシップによる新たな展開

MicrosoftとMetaのパートナーシップは、拡張現実と仮想現実の未来を見据えた新たな展開を生み出している。特に、Oculus Questヘッドセットを軸にしたソフトウェア開発が進んでおり、これまでのWindows MRの役割をQuestが引き継ぐ形となっている。この協力関係により、すでにXbox Cloud GamingやOffice WebアプリがQuestで利用可能となっている。

今後、Questヘッドセットを用いたWindowsアプリケーションの拡張機能が追加され、Questユーザーは視線でWindows 11のラップトップを操作することができるようになる。また、仮想モニターを生成し、現実のデスクトップ環境を拡張する機能も計画されている。これにより、Questヘッドセットは単なるゲームデバイスから、ビジネスや教育の分野においても活躍するツールへと進化していく見込みである。

このパートナーシップは、Microsoftがハードウェア開発に費やすリソースを減らしつつ、ソフトウェアのイノベーションを推進するという戦略的な選択を示している。これにより、MetaとMicrosoftは今後のXR市場において、協力して新たな価値を提供するリーダーシップを発揮していくことが期待されている。