これまでCUDIMMはIntelのArrow Lake-Sプラットフォーム専用と考えられていた。しかし、MSIの発表によると、AMDの次世代Ryzen 8000および9000シリーズもCUDIMMに対応することが明らかになった。

同社の最新イベントにおいて、Ryzen 7000シリーズはまだCUDIMMに対応していないが、X870およびX870EマザーボードでRyzen 8000/9000シリーズの対応が確認されたという。

ただし、どの速度帯のCUDIMMがサポートされるのか、またIntelのプラットフォームと同等の性能が実現されるかは依然として不透明なままだ。

CUDIMMはIntel専用という常識を覆すMSIの発表

これまでCUDIMM(クロックアンバッファードDIMM)は、Intelの次世代デスクトッププラットフォーム「Arrow Lake-S」の専用技術とされていた。しかし、MSIが最近行ったウェブキャストにおいて、同技術がAMDのRyzen 8000シリーズおよび9000シリーズのCPUでも使用可能であることが明らかになった。MSIによれば、AMDのX870およびX870EマザーボードがCUDIMMに対応し、これによりRyzen 8000/9000シリーズと超高速メモリモジュールとの組み合わせが実現するという。

この発表は、これまでIntelプラットフォームに限られていたメモリ技術にAMDが追随する可能性を示唆しており、PCパフォーマンス市場における競争の激化を予感させる。また、CUDIMMはデータ転送速度が6,400MT/sを超えるメモリモジュールを正式にサポートするため、ゲーマーやクリエイターなどのハイパフォーマンスを求めるユーザーにとって注目すべき要素である。

ただし、CUDIMMのサポートがどの程度まで強化されるかは依然として不透明であり、Intelの同世代プラットフォームとどのように比較されるかが今後の焦点となるだろう。AMDはこの技術をどの程度まで進化させることができるのか、今後の動向が注目される。

Ryzen 7000シリーズは未対応だが将来的にサポートの可能性

MSIの発表によると、現在のところRyzen 7000シリーズはCUDIMMに対応していない。これは、Ryzen 7000シリーズのプラットフォームにおいてCUDIMMの導入がブート時に問題を引き起こすためであるとされている。この問題は解決に向けた取り組みが進められているが、現時点では公式な対応予定は発表されていない。

ただし、MSIの技術者によると、Ryzen 7000シリーズが今後CUDIMMに対応する可能性は否定されていない。特に、既存のマザーボードを通じて後から対応する場合、初期のメモリ転送速度が低く設定されることが考えられる。その後、手動または自動的に最適な速度に調整されることが期待されている。これにより、Ryzen 7000ユーザーも将来的にはCUDIMMの恩恵を受ける可能性がある。

しかし、AMDがこの技術を積極的に推進するかどうかは不明であり、技術的なメリットがどの程度あるかも議論の余地が残されている。現時点でRyzen 7000シリーズがCUDIMMに対応しないことは、ハイエンドユーザーにとってはやや残念な状況であるが、今後のアップデートにより状況が変わるかもしれない。

CUDIMM対応により期待されるパフォーマンス向上

CUDIMM対応がAMDのRyzen 8000および9000シリーズに導入されることで、最も期待されるのはメモリパフォーマンスの向上である。CUDIMMは、6,400MT/s以上の高速データ転送を可能にするため、特にゲームや映像編集など、高負荷の作業において大きな効果を発揮することが予想されている。

MSIによれば、X870およびX870Eマザーボードは、CUDIMMの利用を前提に最適化されており、信号品質の向上を実現している。この最適化により、Ryzen 8000/9000シリーズは超高速メモリモジュールと組み合わせて、従来のプラットフォームを超えるパフォーマンスを発揮することが可能になる。

また、メモリオーバークロックにおいてもCUDIMM対応は重要な要素となるだろう。MSIの発表では、CUDIMM対応によって最大9,600MT/sに達するメモリ速度が実現できるとされており、これによりPC全体の応答性が飛躍的に向上する可能性がある。ただし、実際の速度向上や安定性については、今後のベンチマーク結果などで確認されることが待たれる。

メモリ速度10,000MT/s超えはまだ先か?

MSIの技術者TOPPCは、CUDIMM対応によるメモリ速度の向上についても言及しているが、10,000MT/sを超えるデータ転送速度を実現するにはまだ時間がかかるとしている。現段階では、エンスージアスト向けのメモリモジュールであっても、9,200MT/sや9,600MT/sが上限とされており、一般的な利用において10,000MT/sを超える速度を安定して実現することは難しいとされる。

メモリ速度の向上には、電圧やタイミングの最適化、さらには冷却技術の進化が求められており、これらが整わない限りはオーバークロックによる速度向上にも限界があるとされている。また、JEDEC標準規格では非常に保守的なパフォーマンス設定が採用されており、これを超える速度はオーバークロック扱いとなるため、一般ユーザーにとってはリスクを伴う技術であることも忘れてはならない。

今後、AMDおよびMSIがどのようにしてこの限界を突破していくか、そしてIntelとの競争においてどのような優位性を確立していくかが注目される。