Appleの最新チップ「M3 Ultra」が初のベンチマーク結果に登場し、M2 Ultraと比較して約29%のマルチコア性能向上を記録した。しかし、M4 Maxとの比較では、意外にもその差は小さく、マルチコア性能ではわずか7%上回るにとどまっている。
テストされたのは32コアCPUを搭載するMac Studioで、4.05GHzのクロック速度と256GBの統合メモリを備えていた。シングルコア性能はM2 Ultraより13%向上したものの、M4 Maxには20.5%の差をつけられた。
この差の要因として、M4シリーズがARMの「Scalable Matrix Extension(SME)」をサポートしている点が挙げられる。M3 UltraはAppleシリコン最速の座を得たが、その性能向上は想定より控えめであり、次世代モデルとの明確な差別化が課題となりそうだ。
M3 Ultraの詳細スペックとベンチマーク結果の分析

M3 Ultraは、Appleシリコンの中でも最も多くのCPUコアとGPUコアを搭載するプロセッサとして登場した。今回のベンチマークで使用されたのは、「Mac Studio」の新型モデル(Mac15,14)であり、32コアCPU構成のM3 Ultraが採用されていた。
このプロセッサには、24の高性能コアと8つの高効率コアが搭載されており、最大クロック周波数は4.05GHzに達する。さらに、統合メモリ(ユニファイドRAM)は256GBという大容量を誇り、ハイエンドな作業にも対応できる仕様となっている。
ベンチマークテストは「Geekbench 6」によって実施され、M3 Ultraのシングルコアスコアは3,221、マルチコアスコアは27,749を記録した。M2 Ultraと比較すると、マルチコアのスコアは約29%向上しており、Appleシリコン史上最速のプロセッサであることが証明された。ただし、シングルコアのスコアは13%の向上にとどまっている。
一方で、M4 Maxとの比較では異なる結果が見られた。M4 MaxのシングルコアスコアはM3 Ultraよりも20.5%高く、マルチコアスコアはM3 Ultraにわずか7%劣る程度だった。M4 MaxはCPUコア数が16コアであるにもかかわらず、M3 Ultraとの差が想定より小さいことが注目される。特に、M3 UltraのシングルコアスコアがM4 Maxを下回る点は、今後のAppleシリコンの最適化に関する議論を呼びそうだ。
M4 Maxに対するM3 Ultraの微妙な立ち位置とAppleシリコンの今後
M3 UltraはAppleシリコン最速の称号を得たものの、その優位性は期待ほど大きくない。特にM4 Maxと比較すると、マルチコア性能の差がわずか7%しかなく、シングルコアではむしろM4 Maxがリードしている。
M3 Ultraの32コア構成と比べ、M4 Maxの16コア構成は一見すると性能で大きく劣るはずだが、実際にはそうなっていない。この結果は、クロック周波数やアーキテクチャの違いが影響していると考えられる。
特に、M4シリーズでは「Scalable Matrix Extension(SME)」が採用されており、より効率的な処理が可能になっている点がポイントだ。M3 Ultraのクロック周波数は4.05GHz、M4 Maxは4.14GHzと僅差であるにもかかわらず、シングルコア性能で大きな差が出ていることから、M4 Maxがこの技術を活用してスコアを伸ばしている可能性がある。
この結果から、M3 Ultraは単純に「M2 Ultraの後継」というよりも、「M4 Maxと並ぶ性能を持つものの、差別化が難しいモデル」といった印象を与える。M3 Ultraが256GBの統合メモリを搭載可能である点や、より多くのコアを持つ点は確かに強みだが、通常のユーザーがその性能差を実感できるかは微妙なところだ。今後のAppleシリコンがどのような方向に進化していくのか、その戦略が注目される。
M3 Ultraの実際のパフォーマンスとユーザーにとってのメリット
M3 Ultraの登場によって、Mac StudioやMac Proのパフォーマンスが大きく向上することは間違いない。しかし、ベンチマークの結果を見る限り、M3 UltraがM2 Ultraから進化していることは明らかであるものの、M4 Maxとの差が小さいため、選択肢としての優位性が明確ではない点が気になる。
特に、M3 Ultraの本領が発揮されるのはマルチスレッドの処理であり、動画編集や3Dレンダリングといった用途では恩恵があるだろう。
一方で、シングルスレッド性能に関してはM4 Maxの方が高いため、日常的な作業やシングルコア性能が重視されるアプリケーションでは、M4 Maxの方が快適な使用感を提供する可能性がある。M3 Ultraを選ぶ最大の理由は、大量のコアを活かしたマルチタスク処理や高負荷なクリエイティブワークにある。
そうした用途を必要としない場合、M4 Maxを搭載したMacBook Proの方がコストパフォーマンスの面で魅力的な選択肢となるかもしれない。
M3 Ultraは確かにAppleシリコンの歴史において新たなマイルストーンとなるが、その位置づけはやや微妙だ。M4シリーズが進化を続ける中、M3 Ultraの導入はあくまで一時的な繋ぎとしての意味合いが強いのかもしれない。Appleが今後どのようにプロセッサラインを整理し、どの製品にどのチップを採用していくのか、さらなる発表に注目が集まる。
Source:Wccftech