AMDの次世代APU「Ryzen AI 7 350 Krackan Point」のCinebench R23およびCinebench 2024スコアがリークされた。今回のベンチマークは、中国向けのAsus製ノートPC「Lingyao 16 Air」で測定され、TDPは28Wに設定されている。

Cinebench R23では、シングルコア1,943、マルチコア14,607というスコアを記録し、同世代のStrix Pointモデル「Ryzen AI 7 Pro 360」とほぼ同等の性能を示した。一方、前世代のHawk Point「Ryzen 7 8845HS」と比較すると、シングルコア性能は向上しているが、マルチコアでは若干劣る結果となった。

Krackan Pointシリーズは、CES 2025で発表されたAMDの最新Ryzen AI 300ラインナップの一部であり、Zen 5とZen 5cコアを均等に組み合わせた設計が特徴となっている。今後、グローバル市場に登場するかどうかは未確定だが、今回のスコアはこのAPUの実力を測る重要な指標となる。

Ryzen AI 7 350 Krackan Pointのアーキテクチャと特徴

AMDのRyzen AI 7 350 Krackan Pointは、CES 2025で発表されたRyzen AI 300シリーズの中でも注目度の高いモデルのひとつである。Strix Pointと同じくZen 5およびZen 5cのハイブリッドコア構成を採用しているが、大きな違いとして両者のコア数が均等に割り当てられている点が挙げられる。これは、従来のRyzenシリーズとは異なるアプローチであり、特定の用途に対して最適化された設計である可能性が高い。

また、AI処理性能の向上もKrackan Pointの重要な特徴のひとつだ。Ryzen AI 7 350は、AMDが推進するAIアクセラレーション機能を備えており、従来モデルと比較してAI関連のワークロードに対する最適化が施されていると考えられる。特に、動画処理や生成AIを活用するアプリケーションの動作において、Zen 5世代の新たなチップ設計がどの程度の効果を発揮するのかが注目される。

さらに、今回のベンチマークテストはAsus Lingyao 16 Airという中国市場向けのノートPCで行われた。このモデルはAsus ZenBook S16の派生機種であり、Ryzen AI 7 350が搭載される数少ないデバイスのひとつとなる。グローバル市場での展開については不明な点が多いが、Krackan Pointシリーズが今後どのようなラインナップとして登場するのか、さらなる情報が待たれる。

Cinebenchスコアが示すRyzen AI 7 350の実力

今回リークされたCinebench R23およびCinebench 2024のスコアを見ると、Ryzen AI 7 350の性能はStrix Point世代のRyzen AI 7 Pro 360とほぼ同等であることが分かる。

シングルコア性能では1,943(Cinebench R23)および114(Cinebench 2024)という数値を記録しており、AI 7 Pro 360のスコアと比較すると、わずかに低い程度の差にとどまっている。しかし、マルチコアスコアでは14,607(Cinebench R23)および820(Cinebench 2024)と、やや優位に立つ結果となった。

一方で、前世代のHawk PointであるRyzen 7 8845HSと比較すると、シングルコア性能ではKrackan Pointが上回っているものの、マルチコアではRyzen 7 8845HSの方が高いスコアを記録している。これは、Hawk Pointが8つのフルパワーZen 4コアを採用していることによる影響と考えられる。

Zen 5とZen 5cの混在構成であるKrackan Pointが、どの程度のバランスを持つかについては、今後の追加テストが求められるだろう。

また、TDPが28Wに設定されている点も興味深い。これは、ノートPC向けのエネルギー効率を重視した設計であることを示唆しており、バッテリー駆動時の持続時間や発熱管理の面での最適化が図られている可能性がある。特に、パフォーマンスと消費電力のバランスが重要視されるモバイル環境では、このTDP設定がどのような影響を与えるかが今後の焦点となる。

Krackan Pointの今後の展開と市場への影響

Krackan Pointシリーズの詳細はまだ明らかになっていないが、今回のリーク情報を踏まえると、AMDがRyzen AI 300シリーズにおいて新たな市場戦略を打ち出している可能性がある。Strix Pointとは異なるコア構成を採用しながらも、同等のパフォーマンスを実現している点は興味深く、特定の用途に最適化されたモデルとして位置づけられることも考えられる。

また、Ryzen AI 7 350が中国市場向けのAsus Lingyao 16 Airでテストされたことから、Krackan Pointシリーズがグローバル展開されるかどうかは不透明な状況だ。中国市場では独自のノートPCラインナップが展開されることが多いため、Krackan Pointが限定的な流通にとどまる可能性もある。

しかし、今回のベンチマークスコアが示すパフォーマンスが市場の関心を集めれば、今後の製品展開に影響を与えることも十分考えられる。

加えて、AI処理に特化したRyzen AIシリーズの発展は、今後のノートPC市場において重要な要素となる。特に、AIワークロードの最適化が進むにつれて、従来のCPU性能だけでなく、AIアクセラレーションの能力が評価基準のひとつとして確立される可能性がある。Krackan Pointがこの分野でどの程度の影響を与えるのか、引き続き注目が必要である。

Source:Notebookcheck