AMDは次世代グラフィックスアーキテクチャ「RDNA 4」の戦略として、まずデスクトップ向けの製品に注力する方針を示した。

Notebookcheckのインタビューで、同社のプロダクトマネジメントディレクターであるBen Conard氏が明らかにした内容によれば、当面はRadeon RX 9000シリーズのようなディスクリートGPUが主軸となる。これらの製品はRTX 4070やRTX 4060などの競合製品に対抗し、高いコストパフォーマンスを提供することを目指している。

一方で、RDNA 4のモバイル製品への展開も将来的には考慮されており、統合型APUやノートPC向けGPUが含まれる可能性がある。また、AMDはRDNAとCDNAアーキテクチャの統合に向けた長期計画も進行中であり、ML/AI分野へのさらなる展開が期待されている。

RDNA 4が目指すデスクトップ市場での競争優位性

AMDは、RDNA 4アーキテクチャを採用したRadeon RX 9000シリーズを通じ、デスクトップ市場でのポジション強化を図っている。

RX 9070やRX 9060シリーズは、競合他社であるNVIDIAのRTX 4070およびRTX 4060シリーズを直接的なターゲットとし、優れたコストパフォーマンスとパフォーマンスを武器に、消費者層を狙う設計である。これらの製品は、特に価格に敏感なゲーマーやクリエイター層をターゲットにしており、AMDの戦略の中核を担っている。

Notebookcheckのインタビューで明らかにされたRDNA 4の戦略的展開には、製品の遅延が絡んでいる。AMDは、これらのGPUの発売を一部延期し、その期間をソフトウェアスタックの最適化に充てると説明している。

しかし、業界内では、競合他社との価格調整のための戦略的延期という見方も強い。この背景には、NVIDIAがBlackwellシリーズで次世代アーキテクチャを展開する動きが影響していると考えられる。AMDが価格面での競争力をさらに高めることで、デスクトップ市場でのシェア拡大を狙っている可能性は高い。

AMDの計画には合理性がある。GPU市場では性能だけでなく、価格競争が消費者の選択に与える影響は非常に大きい。RDNA 4が高い性能と価格のバランスを実現することで、競争の中で優位に立つ可能性が十分にあると言えるだろう。

モバイル市場での展開を模索するAMDのRDNA 4戦略

RDNA 4アーキテクチャは、現段階ではデスクトップ市場への展開が優先されているが、将来的にはモバイル製品への応用も検討されている。AMDのプロダクトマネジメントディレクターであるBen Conard氏は、統合型APUやノートPC向けディスクリートGPUとしての展開が視野に入っていることを明言している。

特に、RDNA 4の技術が統合型製品に応用されれば、Ryzenシリーズなどと連携することで、モバイル市場における性能向上が期待される。

現在のAMDのラップトップ向けGPU製品は、競合他社に比べてラインナップが限定的である。RDNA 4がノートPC市場に進出すれば、薄型軽量のゲーミングラップトップやクリエイター向けノートPCといった分野で、消費者の注目を集めることが可能となる。

しかし、この分野での競争は激しく、NVIDIAやIntelが既に優れたモバイル製品を展開している現状を考えると、AMDが技術革新や価格競争力をどこまで発揮できるかが鍵となるだろう。

一方で、RDNA 4のモバイル展開が実現すれば、AMDのGPU技術がより幅広い市場で認知される契機となる可能性もある。この戦略は、デスクトップ市場での成功を足掛かりに、モバイル市場でのシェア拡大を目指すAMDの長期的な成長計画の一環とみることができる。

RDNAとCDNAの統合がもたらす新たな可能性

AMDは、RDNAとCDNAアーキテクチャの統合による新たな技術革新を計画している。このプロジェクトは、「UDNAアーキテクチャ」として具体化される予定であり、特にML(機械学習)やAI(人工知能)分野に特化した設計となることが期待されている。Ben Conard氏によれば、この統合は長期的なプロジェクトであり、AMDのグラフィックス部門の方向性を大きく変える可能性を秘めている。

現在、GPU技術はゲーム用途にとどまらず、AIやデータセンターといった高度な計算分野での需要が高まっている。UDNAアーキテクチャは、これらの分野での競争力を高めるとともに、NVIDIAのBlackwellシリーズなどに対抗する手段としても期待されている。特に、AMDがMLやAI分野での応用を強化すれば、消費者だけでなく、企業や研究機関といったプロフェッショナル層からも注目を集めるだろう。

この統合計画が実現すれば、AMDの技術が持つポテンシャルはさらに拡大する。特に、AI分野での応用においては、GPUが計算リソースの主役となることが予想されるため、UDNAアーキテクチャは市場のトレンドに即した動きであるといえるだろう。ただし、NVIDIAや他社も同様の分野で進展を見せていることから、AMDが技術力だけでなく、展開スピードや製品価格でも優位性を確保する必要がある点は見逃せない。

Source:Wccftech