Valveは、Steam Deckの毎年のアップデートを見送る方針を明らかにした。Valveのローレンス・ヤン氏によると、年次リフレッシュによる小規模な改良は消費者にとって「不公平」であり、真の「世代的な飛躍」が起こるまで新型をリリースするつもりはないという。

2022年に登場した初代Steam Deckは、AMDのZen 2アーキテクチャを採用したが、次の世代はさらに大きな性能向上を見込んでいる。同社は、バッテリー性能を犠牲にせず、次世代のCPUおよびGPUが登場するのを待っている最中だ。

Valveの戦略:年次リフレッシュを避ける理由

Valveは、Steam Deckの次世代モデルを毎年更新する考えはないと明言している。Valveのローレンス・ヤン氏は、他の競合製品と異なり、スペックの微調整だけで新モデルを毎年投入することは、ユーザーにとって「不公平」であると述べた。特に、最新モデルを購入したばかりのユーザーが、すぐに新しいバージョンが出てしまうことは不利益を被る可能性があるからだ。

この戦略の背景には、Valveが小規模なハードウェアの更新ではなく、真の「世代的な飛躍」を重視しているという姿勢がある。毎年少しずつスペックを向上させるのではなく、大幅な性能向上を果たした次世代機が完成するまで待つというアプローチである。これにより、ユーザーは一度購入したハードウェアを長期間にわたって使用できるというメリットを享受できる。

また、頻繁に新モデルをリリースすることは、製品開発コストやリソースの効率的な配分という観点からも最適ではない。Valveは、技術革新のスピードが減速していることもあり、バッテリー寿命やパフォーマンスのバランスが取れた真の次世代ハードウェアが登場するのを待つ方が得策であると考えているようだ。このため、Steam Deckの後継機は慎重に開発される見込みである。

「世代的な飛躍」を目指す新型Steam Deck

Valveが次世代のSteam Deckで目指すのは、「世代的な飛躍」である。現行モデルからの単なる小規模なアップデートではなく、大幅な性能向上を追求している。特に、バッテリー寿命とパフォーマンスのバランスを維持しつつ、計算能力の大幅な向上を実現することが目標であるとされている。

Valveは、現在の技術進歩がある一定の速度に達した段階で新しいモデルをリリースする方針だ。具体的には、AMDのZen 5 CPUアーキテクチャやRDNA 3.5 GPUの登場を待っていると見られている。これらの技術革新により、次世代のSteam Deckは大幅なグラフィック性能と処理能力の向上が期待されており、これが「世代的な飛躍」となる。

現在、次世代Steam Deckの具体的な発売時期については明らかにされていないが、Valveはすでに開発を進めていることを示唆している。ユーザーの期待に応えるためにも、同社は単なるアップグレードではなく、真の次世代機としての品質を目指している。この「世代的な飛躍」が実現することで、現行のSteam Deckユーザーも、次世代機へと進化するタイミングを慎重に見定めることになるだろう。

OLED版での改善と次世代への期待

2022年2月に発売された初代Steam Deckは、AMDのZen 2アーキテクチャを採用し、優れたパフォーマンスを提供してきた。その後、2023年11月にはOLEDディスプレイを搭載した新バージョンがリリースされたが、今回のアップグレードはディスプレイとバッテリー性能に限られている。このOLED版は、画質の向上や消費電力の最適化が図られており、特にディスプレイ品質に関心のあるユーザーに好評を博している。

しかし、OLED版のリリースはあくまで小規模な改良に過ぎず、真の次世代モデルの登場はまだ先であるとされている。Valveは、現行の技術ではバッテリー性能を犠牲にせずに大幅な性能向上を図ることが難しいと判断しており、次の大きな技術的飛躍を待つ姿勢を見せている。

次世代Steam Deckが登場するまでの間、Valveは現行モデルの改良を続けながらも、技術的な飛躍を待つことで、ユーザーに長期的な価値を提供しようとしている。ユーザーにとっては、OLED版のリリースが一つの節目であり、次世代機の登場までの期待を高めるものとなっている。

SteamOSの強化と今後の展望

ハードウェアの進化だけでなく、Valveはソフトウェア面でもSteam Deckの強化を図っている。特に、Steam DeckのOSであるSteamOSの改善に向けた動きが注目されている。最近、ValveはArch Linuxチームと提携し、SteamOSのベースとなるArch Linuxの改良を進めている。このコラボレーションにより、SteamOSはより安定したパフォーマンスを提供できるようになると期待されている。

また、ValveはSteamOSをゲーム専用のプラットフォームとしてだけでなく、より広範なPCゲーミングコミュニティにも提供しようとしている。これにより、開発者からのサポートが増え、より多くのタイトルがSteamOSに対応することが期待されている。さらに、一般ユーザー向けのSteamOSディストリビューションのリリースの可能性も示唆されており、今後の展開に注目が集まっている。

Valveは、次世代のSteam Deckだけでなく、OSやソフトウェアのエコシステムも同時に強化することで、ユーザーに統合的なゲーミング体験を提供しようとしている。