AppleはiPhone 16シリーズに新しいA18チップセットを搭載し、ハイエンドモデルのiPhone 16 Proおよび16 Pro MaxにはA18 Proが採用されている。両者のスペックは紙面上で似通っているが、実際のパフォーマンスにどのような違いがあるのか。GeekbenchやAnTuTu、3DMarkといったベンチマークテストの結果を元に、A18とA18 Proの実力を徹底比較する。

A18とA18 Proのスペック比較

AppleのA18とA18 Proは、どちらもiPhone 16シリーズに搭載されているが、性能面ではいくつかの違いが見られる。まず、両チップセットともTSMCの3nmプロセス(N3E)で製造されており、同じ6コアのCPUを備えている。2つの高性能コア(4.05GHz)と4つの高効率コア(2.42GHz)で構成されており、基本的なアーキテクチャは一致しているが、キャッシュサイズに違いがあり、A18 Proはより大きなキャッシュを持つため、より効率的な処理が可能である。

また、GPUに関しては、A18が5コアのApple製GPUを搭載しているのに対し、A18 Proは6コアのGPUを採用しており、ハードウェアアクセラレーションによるレイトレーシングのサポートも向上している。このGPUの違いが、後述するベンチマーク結果に大きな影響を与える要因となる。

メモリサポートも共通しており、両者ともにLPDDR5Xをサポートし、最大7500MT/sの転送速度に対応している。AIや機械学習に関しては、16コアのニューラルエンジンが搭載されており、1秒あたり35TOPSの処理能力を発揮する。スペック面では大きな違いはないが、GPUやキャッシュサイズが性能に影響を与える要因である。

Geekbench 6とAnTuTuでのCPUとGPU性能差

Geekbench 6のCPUベンチマーク結果では、A18はシングルコアで3,141ポイント、マルチコアで7,804ポイントを記録している。一方、A18 Proはそれぞれ3,358ポイントと8,814ポイントを獲得しており、5〜7%ほどの性能向上が見られる。この差は大きくないものの、キャッシュサイズの違いがA18 Proのわずかな優位性を示していると言える。

次に、AnTuTuベンチマークの総合スコアでは、A18が1,668,567ポイントに対して、A18 Proは1,816,016ポイントを記録しており、約8.8%の性能差が生じている。特にGPU性能において、A18の675,209ポイントに対し、A18 Proは728,942ポイントを達成しており、ここでも約8〜10%の差が確認できる。

CPUに関しては、A18が409,372ポイント、A18 Proが451,848ポイントを記録しており、GPUと同様にA18 Proの方が高い性能を示している。メモリやユーザーエクスペリエンスに関しても、両者で若干の差があり、A18 Proが総合的に上回る結果となっている。

3DMarkで明らかになったグラフィック性能の差

A18とA18 ProのGPU性能を評価するために、3DMark Wild Life Extreme Stress Testを実施した。結果として、A18のGPUは最高ループスコア3,600ポイント、最低ループスコア2,370ポイントを記録し、安定性は65.8%であった。一方、A18 ProのGPUは最高ループスコア4,574ポイント、最低ループスコア3,096ポイントを達成し、安定性は67.7%と高く、グラフィック性能においてA18 Proが大幅に優位であることが確認できた。

特に、A18 Proの6コアGPUは、A18の5コアGPUと比較して約30%の性能向上を示しており、ゲーミングやグラフィック処理においてA18 Proが大きな差をつける要因となっている。また、iPhone 16 Pro Maxではグラファイト製のサブストラクチャがGPUの冷却性能を高め、持続的なパフォーマンスを維持するのに寄与している点も注目すべきである。

さらに、3DMark Solar Bay Unlimitedのテストでも、A18 Proはレイトレーシング機能で13%の優位性を示し、平均フレームレートは30.4FPSに達した。これに対し、A18は26.9FPSにとどまり、レイトレーシング性能においてもA18 Proが一歩先を行く結果となった。

AI/MLタスクでのA18とA18 Proの実力

AIおよび機械学習(ML)タスクの処理において、A18とA18 Proは同じ16コアのニューラルエンジンを搭載しているため、大きな差は見られない。Geekbench AIのベンチマーク結果では、A18がシングル精度で4,231ポイント、A18 Proが4,582ポイントを記録しており、若干の差があるものの、実際のAI/MLタスクにおいてはほぼ同等のパフォーマンスを発揮する。

特に、Half Precision(FP16)およびQuantized(INT8)のデータ型では、A18がやや優位に立つ結果も見られた。両チップセットともに、LPDDR5Xメモリの高速化による恩恵を受けており、AIや機械学習関連の処理能力は非常に高いレベルにある。

日常的な使用においては、両チップセットのAI/MLタスクに大きな違いは感じられないが、高度な処理が求められるシーンでは、A18 Proの方がわずかに効率的に動作する可能性がある。